走ることについて語るときに僕の語ること by 村上春樹 [書評]

走ることについて語るときに僕の語ること by 村上春樹 [書評]

2017年5月31日

久し振りに村上春樹さんの本を読んだので、ご紹介です。

メモワール

村上春樹さんの文章が大好きで、長編・短編を問わず小説は全部読み、さらにエッセイやノンフィクションも読んでいました。

しかも、何回も何回も読み直したり、初期の頃の小説は、僕自身のタイピングの練習も兼ねて、パソコンに打ち込んだりしていた記憶があります。(この打ち込んだファイルはどこに行ってしまったのだろう?)

だた、最近の村上春樹さんへの熱狂ぶり(特にここ数年のノーベル文学賞候補への報道)を見て、僕の方は少し熱が冷めてしまったのか、長編小説は「海辺のカフカ」以降読んでいません。

さらに、ここ数年はビジネス書を読むようになってきて、小説やエッセイを読まなくなってしまいました。

しかし、本を読む習慣が定着してきたので、ビジネス書だけでなく、小説やエッセイなども色々と読んでいこうと思い、この本を手に取りました。

今年に入って、ランニングが習慣化したことも、この本を手に取った理由なのかも知れません。

「僕はこの本を「メモワール」のようなものだと考えている。個人史というほど大層なものでもないが、エッセイというタイトルでくくるには無理がある。」(後書きより)

確かにこの本は、ある一定期間の中で、村上春樹さんが走ることについて、その時々に感じたこと考えていることを、整理したものをまとめた構成になっています。

執筆の期間としては、2005年の夏から2006年の秋ということになっていますが、内容はその期間以外に及びます。

村上春樹さんが小説家になった経緯と、その時に走り始めたこと。初めてのマラソン(アテネからマラトンを1人で走る、というある男性誌からの企画)。サロマ湖100キロウルトラマラソンへ参加した数日後のスケッチ。などなど。

執筆された期間は、おそらく村上春樹さんが50代半ばの時のものなので、僕としては、これから10年先のことに思いを馳せながら読み進めました。

村上春樹さんの生き方と重ね合わせることなど、恐れ多いことではあるのですが、一人の人間として、ですのでお許しください。

ランナーズ・ブルー

村上春樹さんが走り始めたのは、彼が本格的に専業小説家として3冊目の小説「ダンスダンスダンス」を執筆した後のことだそうです。

理由は体調の維持。それから一人でできて、さらに特別な装備などが必要なくお金がかからないこと。

さらに、性格的に対戦型のスポーツが向いていないことや、元々体が頑丈で走ることに向いていたことも、ほかのスポーツではなく、ランニングを始めた理由だったようです。

そんな感じで、短距離のレースからスタートして、初マラソンはなぜか一人でギリシャのオリジナルコースを逆走など、順調(?)に走り続けていた村上春樹さんにも、走るモチベーションが下がった「ランナーズ・ブルー」の時期がありました。

それはサロマ湖100キロウルトラマラソンを完走した、数日後とのことです。

僕にしてみれば、なんで好き好んでそんなレースに出るのだろう? とも思うのですが、僕もいつかそういう気持ちになるのでしょうかね…

そのウルトラマラソンの時のスケッチは、読んでいるだけで、こちらまで息切れして辛くなってきます。

少なくとも最後まで歩かなかった

その後に起こったある種の精神的虚脱感が、村上さんを包んでいきます。

しかしそんなかでも、毎年のレース参加をやめず、ただ黙々と走り続けたというところに、何か引っかかるものを感じました。

走ることはただ肉体的なトレーニングというだけでなく、走りながらいろいろなことを考え、同時に何も考えずに走ることで、小説家として書く方法を学んだとおっしゃっています。

なので、たとえどんな「ランナーズ・ブルー」「精神的虚脱感」があったとしても、ただただ走り続ける必要があったのだと思います。

途中でマラソンだけでなく、スカッシュやトライアスロンなども取り入れたり、上がらないモチベーションの中でも体を動かし続けていきます。

これが、最終的にはマラソンに戻っていくことにつながるのです。

40代以降は、レースのタイムもなかなか上がらず、試行錯誤する時期もあったようですが、年齢を重ねていくにつれて体力が落ちていくことは当然です。

村上春樹さんもすでに60代後半ではありますが、おそらく今でも貼りし続けているでしょう。

まとめ

村上春樹さんは、自分に向き合い、走り続け文章を書き続けているのだと思います。

今は80歳まで生きる時代ですし、今後僕らの子供の世代は100歳まで生きることになるはずです。

そんな長い人生を、自らの手で精進して「少なくとも最後まで歩かず」生きていくことができたら、素晴らしいですね。

そんな人生を目指し、僕も毎日走りたいと思います!

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